
2026年07月29日
決算前にできる節税対策とは?2026年4月からの減価償却の特例・前払い・決算賞与を徹底解説
この記事の結論
決算前に利益が想定以上に出そうな場合、設備投資や必要な経費の支払い時期を見直すことで、当期の法人税負担を抑えられる可能性があります。ただし、慌てて大量の仕入れをする、来期の求人掲載費用を前払いする、来期に実施予定の社員旅行費用を先払いするといった方法は、支払っただけで当期の経費になるとは限りません。重要なのは、支出の内容、サービスを受ける時期、継続性、決算日までに事業で使用したかどうかです。本記事では、2026年4月からの減価償却の特例、経営セーフティ共済、家賃や生命保険料の年払い、決算賞与など、決算前に検討される対策をわかりやすく解説します。
こんな経営者の方におすすめです
- 決算前に利益が予想以上に増えそうな法人
- 今期中にできる節税対策を確認したい方
- 設備や備品の購入を検討している中小企業
- 経営セーフティ共済や決算賞与を活用したい方
- 前払いが経費になる条件を正しく理解したい方
- 納税前の資金繰りに不安を感じている方
決算前の節税対策で最初に確認すべきこと
決算前の節税対策は、単純に会社のお金を使えばよいというものではありません。支出した金額が当期の損金、つまり税務上の経費として認められなければ、現金だけが減り、法人税の計算には反映されない可能性があります。
決算対策を考えるときは、次の3点を確認することが重要です。
支払日ではなく、商品の販売や役務提供、使用開始の時期によって判断されます。
税金を減らすためだけの不要な購入は、会社の資金繰りを悪化させます。
契約書、請求書、支払記録、社内通知などを整理しておく必要があります。
節税対策の目的は、不要なものを購入することではありません。今後必要になる設備やサービスの導入時期を適切に調整し、税法上認められた制度を活用することです。
2026年4月から変わる減価償却の特例
2026年4月1日以後に取得する対象資産について、中小企業者等が利用できる「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」の取得価額基準が、従来の30万円未満から40万円未満へ引き上げられました。対象となる資産であれば、通常の減価償却ではなく、取得して事業に使用した年度に全額を損金算入できる可能性があります。年間の取得価額合計は、引き続き300万円が上限です。
| 項目 | 2026年3月31日まで | 2026年4月1日以後 |
|---|---|---|
| 1資産の取得価額 | 30万円未満 | 40万円未満 |
| 年間上限 | 合計300万円 | 合計300万円 |
| 経理処理 | 対象資産を取得年度に全額損金算入可能 | 対象資産を取得年度に全額損金算入可能 |
たとえば、パソコン、業務用スマートフォン、事務机、複合機、業務用機器など、1点あたり40万円未満の資産を購入する予定がある場合は、この特例を活用できる可能性があります。
決算日までに納品され、実際に事業の用に供していることが重要です。決算日前に代金を支払っても、納品や使用開始が来期であれば、原則として当期の損金にはできません。また、対象企業の要件や年間上限も確認が必要です。
慌てて大量の仕入れをしても節税にならない?
決算前に利益が出ているからといって、販売予定の商品や原材料を大量に仕入れても、すべてが当期の経費になるとは限りません。決算日時点で販売されずに残っている商品や原材料は、原則として棚卸資産として資産計上します。
つまり、仕入れ代金を支払っていても、商品が期末在庫として残っていれば、その分は当期の売上原価に含められません。慌てて大量の仕入れをすると、税金はあまり減らない一方で、現預金だけが減り、在庫管理や保管費用が増える可能性があります。棚卸資産は、決算時に一定の評価方法で期末在庫として計上する必要があります。
図解|大量仕入れをした場合
↓
決算日時点で売れずに在庫として残る
↓
期末棚卸資産として資産計上
↓
支払額の全額は当期の経費にならない
来期の求人掲載費用を前払いする
来期に掲載する求人広告の費用を決算前に支払っても、原則として当期の損金にはなりません。求人掲載というサービスを実際に受けるのが来期であれば、支払時点では前払費用として資産計上し、掲載期間に応じて来期以降の費用にするのが基本です。
短期前払費用の特例は、一定の契約に基づいて継続的に受ける役務について、支払日から1年以内の分を継続して支払時に損金処理している場合に認められる例外です。単発の求人広告や、掲載内容・期間・金額が案件ごとに変わる広告費は、単に前払いしただけで適用できるとは限りません。
「来期に使う予定だから今期中に払っておこう」という理由だけでは、当期の経費になりません。契約内容、掲載開始日、役務提供の実態を確認しましょう。
来期に実施予定の社員旅行費用を先払いする
来期に実施する社員旅行について、旅行会社へ代金を前払いしても、原則として旅行が実施されるまでは前払費用です。決算前に支払っただけで当期の福利厚生費にできるとは限りません。
また、社員旅行を福利厚生費として処理するには、旅行の目的、参加対象、参加割合、期間、会社負担額などを総合的に判断する必要があります。国税庁は、一般的な目安として、旅行期間が4泊5日以内であること、参加人数が全体の50%以上であることなどを示しています。ただし、最終的には旅行内容全体で判断されます。役員だけの旅行や実質的な私的旅行は、福利厚生費として認められない可能性があります。
経営セーフティ共済の掛金を前払いする
経営セーフティ共済は、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐことを目的とした制度です。一定の要件を満たす法人は、支払った掛金を損金に算入できます。
前納した掛金については、支払った日の属する事業年度に12か月分まで損金算入できるとされています。前納期間が12か月を超える場合は、原則として各事業年度に期間配分して損金算入します。
- 掛金の支払いには共済制度上の上限があります。
- 解約手当金を受け取ると、法人では原則として益金になります。
- 2024年10月1日以後に解約して再加入した場合、解約日から2年以内に支払う掛金は損金算入できません。
- 節税だけを目的に加入・解約を繰り返す方法には注意が必要です。
経営セーフティ共済は納税を永久に免除する制度ではなく、解約時の益金計上まで含めた資金計画が必要です。
家賃や生命保険料を年払いする
家賃の年払い
毎月支払っている事務所家賃を年払いへ変更する場合、短期前払費用の特例によって、支払日から1年以内の家賃を当期に損金算入できる可能性があります。
ただし、契約に基づく継続的なサービスであること、支払日から1年以内にサービスを受けること、毎期継続して同じ処理を行うことなどが必要です。「今期だけ利益が多いから年払いに変更し、翌期から月払いに戻す」といった利益操作目的の処理は否認される可能性があります。
生命保険料の年払い
法人契約の生命保険料は、年払いにすれば必ず全額を損金にできるわけではありません。保険の種類、契約者、被保険者、保険金受取人、解約返戻率などによって、全額損金、一部損金、一部資産計上、給与扱いなど、税務処理が異なります。
特に、解約返戻率が高い定期保険や第三分野保険では、保険料の一部を資産計上する必要がある場合があります。決算直前に保険へ加入する場合は、保険会社の説明だけで判断せず、税理士に契約内容と税務処理を確認することが重要です。
決算賞与を支給する
業績が良かった年度に、従業員へ決算賞与を支給する方法もあります。実際に決算日までに支給すれば、原則として支給した事業年度の損金になります。
決算日までに支給せず、未払計上する場合でも、次の要件をすべて満たせば、通知した事業年度の損金として認められる可能性があります。
- 決算日までに、支給額を従業員ごとに通知する
- 同時期に支給を受けるすべての従業員へ通知する
- 事業年度終了日の翌日から1か月以内に、通知した全員へ支払う
- 通知した事業年度で損金経理する
「支給日に在籍している従業員だけに支給する」などの条件が付いている場合は、未払賞与としての要件を満たさないことがあります。また、役員賞与には従業員賞与とは異なるルールがあるため、同じ処理はできません。
ほかに検討できる決算前の対策
| 対策 | 概要 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 修繕の実施 | 壊れた設備や内装を修理する | 資産価値や耐用年数を高める工事は資本的支出になる場合がある |
| 不良在庫の処分 | 売れない在庫を廃棄・処分する | 写真、廃棄証明、社内記録などを残す |
| 貸倒損失の確認 | 回収不能となった売掛金を整理する | 単に回収が遅れているだけでは損金にできない |
| 広告・販促の実施 | 当期中に広告掲載や制作物の納品を完了する | 来期掲載分や未納品分は前払費用になる可能性がある |
| 従業員教育 | 研修や資格取得支援を実施する | 業務との関連性や対象者の公平性を確認する |
決算前対策の「経費になる・なりにくい」早見表
| 支出内容 | 当期の経費 | ポイント |
|---|---|---|
| 40万円未満の対象設備 | 条件を満たせば可能 | 決算日までに取得し、事業で使用する |
| 決算前の大量仕入れ | 在庫分は不可 | 期末在庫は棚卸資産になる |
| 来期の求人掲載費 | 原則不可 | 掲載開始前は前払費用 |
| 来期の社員旅行代 | 原則不可 | 旅行実施前は前払費用 |
| 経営セーフティ共済の前納 | 12か月分まで可能 | 加入・解約・再加入時のルールを確認 |
| 家賃の年払い | 条件を満たせば可能 | 1年以内・継続処理などが必要 |
| 生命保険料の年払い | 契約による | 一部資産計上や給与扱いの場合がある |
| 決算賞与 | 要件を満たせば可能 | 個別通知・1か月以内の支払い・損金経理 |
節税対策で資金繰りを悪化させないことが重要
決算前に節税対策を行うと法人税を抑えられる可能性がありますが、支出によって会社の預金残高は減少します。たとえば100万円を使っても、税金が100万円減るわけではありません。不要な支出を行えば、税負担は下がっても、会社に残る現金は少なくなります。
決算前に確認したい資金
- 法人税・消費税・地方税の納税資金
- 給与・社会保険料・家賃などの固定費
- 仕入れ代金や外注費の支払予定
- 賞与を支給した後の運転資金
- 来期の広告費、採用費、設備投資資金
節税策を実行する前に、決算後3か月から6か月程度の資金繰りを確認しましょう。利益が出ているにもかかわらず、売掛金の入金より先に税金や外注費の支払いが発生することで、資金不足に陥る場合があります。
まとめ|決算対策は「支払日」ではなく内容と実態で判断する
2026年4月からは、中小企業者等の少額減価償却資産の特例について、対象となる取得価額基準が40万円未満へ引き上げられました。必要なパソコンや業務用設備の購入を予定している企業にとっては、活用を検討しやすい制度です。
一方で、慌てて大量の仕入れをする、来期の求人掲載費用を前払いする、来期の社員旅行費用を先払いするといった方法は、支払っただけでは当期の経費になりません。経営セーフティ共済、家賃の年払い、生命保険料、決算賞与についても、それぞれ適用条件や注意点があります。
節税対策で最も重要なのは、税金だけを見て判断しないことです。必要な支出か、当期の損金になるか、実行後も十分な運転資金が残るかを確認し、税理士などの専門家と相談しながら進めましょう。
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※ご利用には所定の審査があります。税務上の判断は税理士または所轄税務署へご確認ください。
よくある質問
Q.2026年4月から40万円未満の備品はすべて経費になりますか?
A.すべての企業・資産が自動的に対象になるわけではありません。中小企業者等の要件、対象資産、年間300万円の上限、決算日までの使用開始などを確認する必要があります。
Q.決算前に商品を購入すれば仕入代金を全額経費にできますか?
A.決算日時点で売れずに残っている商品は、原則として棚卸資産になります。大量に仕入れても、在庫として残った部分は当期の売上原価になりません。
Q.翌期の求人広告費を前払いすれば当期の経費になりますか?
A.原則として、翌期に掲載される広告費は前払費用です。単発の求人広告は、短期前払費用の特例を適用できない可能性があるため注意が必要です。
Q.決算賞与は決算後に支払っても当期の経費になりますか?
A.従業員ごとの金額を決算日までに通知し、事業年度終了日の翌日から1か月以内に通知した全員へ支払い、当期に損金経理するなどの要件を満たせば、当期の損金にできる可能性があります。
Q.節税対策で資金が不足した場合はどうすればよいですか?
A.まずは納税予定額、入金予定、固定費などを整理してください。売掛金の入金待ちによる一時的な資金不足であれば、融資だけでなくファクタリングも選択肢になります。
免責事項
本記事は一般的な税務情報をわかりやすく紹介するものであり、個別の税務判断や節税効果を保証するものではありません。実際の処理は、契約内容、事業年度、企業規模、会計方針などによって異なります。税理士または所轄税務署へご確認ください。
出典・参考情報
本記事は、国税庁などが公表している法令・税制改正資料を参考に、減価償却および少額減価償却資産の特例について一般向けに整理したものです。
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国税庁|令和8年度 法人税関係法令の改正の概要「主な中小企業税制の見直し」
2026年4月1日以後に取得等する少額減価償却資産について、取得価額基準が30万円未満から40万円未満へ引き上げられたこと、年間上限が引き続き300万円であることなどを参照しています。
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国税庁|No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
特例の対象法人、対象資産、年間上限、損金経理、明細書の添付、中古資産やソフトウェアの取扱いなどを参照しています。
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国税庁|No.5400-2 事業の用に供した日
減価償却を開始する時期について、購入日や納品日だけではなく、資産を本来の目的で使用し始めた日が重要であることを参照しています。
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国税庁|法人税基本通達 第7章 減価償却資産の償却等
減価償却資産の取得価額、資産の判定単位、資本的支出など、減価償却に関する基本的な取扱いの参考としています。
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国税庁|No.5403 一括償却資産の損金算入
取得価額が20万円未満の減価償却資産について、3年間で均等に損金算入する一括償却資産の取扱いを確認する際の参考情報です。
ご注意:各制度の適用要件や国税庁の掲載内容は、法令改正などによって変更される場合があります。実際に設備購入や申告処理を行う際は、最新の公表資料を確認し、税理士または所轄税務署へご相談ください。
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カテゴリ:ソクデルニュース

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